クレジット投資部
2013年入社
今野 藍紀
今野は得意の英語を活かしてグローバルマーケットと向き合い、投資信託を通じて海外の社債などに投資して、運用成果を上げている。運用に求められるものは日々変化しており、挑戦の日々が続く。
最初の配属先で今野は、ゆうちょ銀行ならではの仲間の温かさを感じて仕事をする幸運に恵まれた。次に異動した本社市場管理部では、企画業務の厳しさを教わることになる。温かさも厳しさも味わった最初の3年間だった。
学生時代、イギリスに1年間の留学経験がある今野。英語力を活かしながら、携わった業務の成果が多くの人に届く仕事をしたいとの思いを抱き入社した。最初の配属先は神奈川県の横須賀店だった。外国人のお客さまの来店が多いところで、米国に送金したい、支払いに関する手続きを教えてほしい、といった依頼がある。そんなお客さまが来店されると、今野に声がかかり対応を任された。
「ゆうちょ銀行の基本業務を学びながら、英語力を活かしてお役に立てるという意味で、私にとってはとてもありがたい職場でした」。
主に窓口に勤務していたが、時には近隣の大学や国の出先機関などに出向いて、口座獲得やクレジットカードなどの営業も経験した。
約2年、横須賀店に在籍したが、一番の思い出は窓口業務を始めたばかりのころ、自分のミスを先輩社員にカバーしてもらった時のこと。窓口で支払いをしたお客さまに領収証を渡し忘れてしまったのだ。慌てて上司に相談していたところ、渉外担当の先輩社員が騒ぎを聞きつけ、「その地区は自分の担当だから、お客さまの自宅に私が届けますよ」と言ってくれた。
「ゆうちょ銀行の仲間は温かいな、と実感しました。先輩に感謝するとともに、ゆうちょ銀行に入って良かった、自分も成長して貢献し、恩返しをしないといけないな、と気持ちを新たにした出来事でした」。
入社3年目となる2015年、今野は本社の市場管理部に異動となる。運用商品の経理を担当、取引先や情報ベンダーからデータを取得し、債券の時価登録や仕訳作成など、決算データの作成が主な業務であった。
「市場部門の基本を学ぶには最適の部署でした。ゆうちょ銀行の資金がどのように運用され、どのようにして収益を上げているのかが分かりました」。
市場管理部の仕事に就いたばかりのころ、上司から厳しい指導を受けたことがあった。
「先輩の作ったフォーマットに従って書類を作成して上司に持参したところ、『この書類のどこに君自身の工夫があるのか。前例に倣うだけでなく、環境の変化や君の気づきを入れて、常に改善を図ってほしい』と指摘を受けたのです。資料をただ更新するだけで、付加価値を付けて資料をより良くするという視点が欠けていたと深く反省しました」。
資料のポイントが分かるように、新しい表を作成するなど工夫をして再提出し上司の承認を得たが、企画業務に対しての心構えを教えられたと今野は感じた。
「これ以降、どんな業務に取り組む時でも、ただ作業をするのではなく、常に改善できる点を考えるようになりました」。
入社4年目からは、いよいよグローバルマーケットと向き合い、巨額の資金の運用を担うことになった。世界有数の機関投資家としての醍醐味を味わうとともに、責任の重さも痛感する。
入社4年目となる2016年、今野は総合委託運用部に異動となった。総合委託運用部は2021年にクレジット投資部に名称変更となったが、今野の仕事内容は変わっていない。部署としての役割は、お客さまからお預かりした資産を社債などで運用し、収益を上げること。国内社債、外国社債に直接投資するチームもあるが、今野が所属するチームでは主に外国社債を扱う投資信託で運用している。主な仕事は①投資計画の策定、②投資先(運用会社)の選定、③既存ポートフォリオのモニタリングである。また、新戦略・商品を発掘し、導入していく役割も担っている。
「ゆうちょ銀行の投資信託の運用残高は約50兆円であり、世界有数の機関投資家です。得られる情報量の多さや巨額の資金を扱うダイナミックさは、ゆうちょ銀行の運用部門ならではのもの。私たちの運用成果が会社の収益に直結するので、大きなやりがいと責任の重さを感じています」。
投資計画の策定や投資先の決定は、チームでのディスカッションを経て決定している。世界経済の動向、商品ごとのリスク・リターン分析、投資先の国やセクターの分析などを精緻に行い、徹底的に議論を交わす。
「疫病、戦争、大事故など世界経済を揺るがすニュースや、金利・為替動向などのニュースに敏感になりました。また、私のチームでは、海外の企業の社債を扱うので、海外の運用会社の人とのコミュニケーションも欠かせません。英語を用いて成果が多くの人に届く仕事がしたいという入社前の希望は、まさに実現できていると思います」。
運用の仕事を2年経験し、少し慣れてきた2018年、今野は海外企業派遣制度に手を挙げた。ゆうちょ銀行では、毎年、数名がこの制度で海外企業に派遣されている。今野が派遣されたのはファンドの評価および選定を生業とする所謂ゲートキーパー。ニューヨークとロンドンにオフィスがあり、2か月かけて2カ所に滞在し、評価対象である運用会社への訪問に同行したほか、定量データの分析やチームでのディスカッションなど、評価・投資までの一連のプロセスを経験した。
「投資先ファンドのモニタリングのプロセスを見せてもらったり、投資判断のためのデータ分析を確認したり、また、作成したファンド評価レポートを基にチームでディスカッションもしました。それまで運用会社を選定する仕事をしてきましたが、他社が実際にどのような観点でファンドを評価しているのか、投資後のモニタリングをするうえでのポイントはどこにあるのか、といったことを改めて知ることができ、知識の幅を広げ奥行きを深めることができました」。
現地では滞在する住居を自ら不動産会社と交渉して決めるなど、直接の仕事以外の面でも鍛えられた。
「派遣された会社の方とは、帰国後も電話会議などで話す機会があります。滞在期間中に親しくなったので、その後もミーティングの前のちょっとした時間に、相手の家族の話題などを話す関係になりました。コミュニケーションを深めることで、オフィシャルな話の時も、お互いにより本音で会話ができるようになった気がします」。
今野はあるプロジェクトに中心メンバーとして参画、新しい仕組みの導入に成功し自信を付けた。だが、運用に求められることは日々変化している。これからも挑戦し続けていく姿勢が大切だと感じている。
クレジット投資部に異動して5年目となり、今野は短期資金の運用に係わる新規プロジェクトを中心となって進める立場になった。それまでも、様々なプロジェクトに参加してきたが、中心となって進めるのは初めてのことだ。
投資しているそれぞれの投資信託では費用支払いや担保授受などに備えて、一定の現金を保有している。これらの資金を、うまく活用して効果的な運用ができないかというのがプロジェクトの目的だった。
「信託銀行や運用会社などの取引先への説明やフィージビリティ(実行可能性)の確認、社内関係部署との調整、社内承認を得るための会議資料の作成などを担当しました。1人でできることではなく、上司やチームのメンバーのサポートをいただきながらでしたが、無事導入することができた際には、運用の幅を広げる施策に貢献できたという達成感を味わうことができました」。
折悪しくコロナ禍で出勤もままならず、チームメンバーも出勤に制限がかかっており、取引先もまた同様の状況にある中で、一つ一つ課題をクリアしていく地道な努力が続いた。約4か月かかったが、「新しいことに挑戦したことで、大きな自信を得ることができた」と今野は振り返る。
今野が仕事で心がけていることは、数字やデータを自分で確認することだ。クレジット投資部では、社内や取引先と数字のやりとりをすることが多い。ところが、思わぬところにエラーやオペレーションミスが隠れている。
「こちらの計算結果と取引先から受領したデータが違っていたことがありました。計算し直してもこちらの計算結果は変わらなかったことから、取引先に再確認してもらったところ、先方のシステムエラーだと分かったのです。数字の根拠を理解し、遡って自ら検証する姿勢が大切だと改めて感じました」。
今後のキャリア形成に向けて必要なことは、運用に求められていることが変化していくことを認識し、常にアンテナの感度を高めておくことだと今野は言う。
「単純に収益を生むだけでなく、市場環境、規制動向、社会情勢によって運用に求められていることは変化します。例えば最近では、ESG*1をテーマに投資するファンドが増えています。ゆうちょ銀行でも、グリーンボンド*2、ソーシャルボンド*3などに投資を始めました。収益だけでなく、投資資金が当初の目的通りに使われているか、環境や社会問題にどの程度の影響を与えたか、といった観点がモニタリングの評価項目に加わっています。現状に満足することなく、その時々でどのような改善ができるのか。マーケットと対峙する人間として、成長を感じることもありますが、変化する未来への挑戦は続けなければなりません」。
*1環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の要素を考慮した投資のこと。
*2企業や地方自治体などが、環境改善効果のあるプロジェクトに関する資金調達を目的に発行する債券のこと。
*3企業や地方自治体などが、社会課題に取り組むプロジェクトに関する資金調達を目的に発行する債券のこと。
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